「ナナフシ観察記録」第1回。4世代に渡る飼育の経験と、この秋思いがけず誕生した第5世代目の発見から、新たな記録の旅が始まります。

「ナナフシが生まれてる!」
2024年の10月の暖かい日に、ナナフシが生まれてた。
まさかこの時期に生まれるとは思っていなかった。いままでナナフシを飼っていた経験上、生まれるとしても年末か年明けくらいかなと思っていた。なので、見つけられたのは本当に幸運というか、偶然だった。
ナナフシの卵は、室内の観葉植物の鉢植えに蒔いてある。なので、生まれると部屋の中で放し飼い時の状態になる。なんでそんなところに卵を蒔いているのかというと、これには理由があって、過去の経験からの試行錯誤の末なんだけど、その試行錯誤については、また別の機会に書いていこうと思う。
朝食を食べ終え、ふとスパイスや調味料が置いてある棚のあたりを見たら、そこに見覚えのある細い生き物がよたよたと歩いていた。「ナナフシだ!」
幼虫はこんなに小さくて目立たないのに、意外と目に止まるのが不思議だ。一応、卵のある植木鉢は、普段いることの多いテーブルの上においてあるから、生まれてきたら目につきやすい場所ではあるけれど。それにしたって、こんな蚊のような細さの生き物が、視界の端っこで動いているのをちゃんと感知する人間の目も面白い。見てないようで、色んなところを見てるんだなと我ながら感心したりする。
入れ替わりのナナフシ
今回生まれたナナフシが印象的だったのは、ふたつ理由があって、ひとつはタイトルに書いたとおりに季節外れの秋に生まれたということ。こんな時期に生まれて大丈夫なのだろうか?という疑問と、なんとか無事に育てないとという使命感が芽生えた。
もうひとつは、それまで飼っていたナナフシの成虫(第4世代目)が、ちょうど9月の末に息を引き取ったばかりだったことだ。ずっと一緒にいたナナフシがいなくなり、寂しい思いをしていた矢先だった。
これも経験上だけど、ナナフシは年明けくらいから生まれて、春夏と育ち、秋を迎えて、冬の前に力尽き、土に還る。まれに遅生まれや丈夫な個体は年末まで生き延びるけど、たいていはそういったサイクルだ。だから仕方ない。
とはいえ、9月末というのはちょっと早い。まだナナフシがいなくなるという心の準備ができていなかった。自分の生活環境が変わったという事情も重なって、感傷的な気分になってしまった。
そんななか、全く思いも寄らないタイミングでの、ナナフシの出現。初めて飼ったナナフシの卵が孵ったときもなにか成し遂げたような高揚感を味わえたが、今回もそれに匹敵するような喜びだった。

今までのナナフシも、その時々写真や動画に撮っていたけど、どちらかというと日々の飼育で満ち足りていて、そこまで継続的に記録はしていなかった。特に第2世代のナナフシはたくさん生まれたので、その後は、どこか当たり前の存在になりかけていた。
第1世代が1匹から始まり、第2世代が15匹になった。ということは第3世代は100匹は堅いだろう。第4世代は1000か? そうやってこのまま無限に増やせるような錯覚さえ持った。どんどん増やして、それをもとの公園などに蒔いて、公園中を、いや街中、日本中をナナフシだらけにしてやろう。そんな野望をすら持っていた。(この野望は今でも持っている)
しかし、第2世代以降は増えなかった。彼らが産み落とした300以上の卵から生まれて育った第3世代は10匹程度だった。ここでおやっと思った。卵の孵し方が悪かったのかもしれない。
その第3世代ナナフシも、引っ越しなどを経て、予想よりも早く死んでしまった。悪いことは続き、彼らの卵は年を越しても孵らなかった。飼い始めて3年目にして初めての0。もしこのまま孵らなければ、あれだけ賑やかだった我が家のナナフシも途絶えてしまう。いや、思えば今まではビギナーズラックだったのかもしれない。偶然見つけて、偶然卵が孵って、どんどん増えて、なにかトントン拍子だった。
第4世代から第5世代ナナフシへ
その後粘り強く待っていた甲斐があり、今年の春なんとか1匹だけ生まれた。
これでナナフシは4世代目まではつながった。その薄氷を踏む思いで育てた4世代目もこの秋に早死して、落胆したところから出てきた第5世代。これからは悔いの残らないように、なるべく記録を取りながら育てていこうと思った。
(つづく)
- ナナフシ観察記録📒【4】 秋生れナナフシの食料
- ナナフシ観察記録📒【3】 最初に産まれたナナフシのこと
- ナナフシ観察記録📒【2】卵の管理について
- ナナフシ観察記録📒【1】ナナフシがうまれてる!
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- ナナフシ製作記