
タントのバッテリーを交換した。それが想像以上に大変だったので、すこし書き留めておこうと思う。
去年の冬
ほんとはもう少し早く替えるつもりだった。去年の冬に一度バッテリーが上がったからだ。そのときは粘った挙げ句、運良くエンジンが掛かったけど、そろそろ交換時かなと、新品のバッテリーを注文した。
そしてバッテリーが届くと、いつでも交換できるという安心感か、もう少し古いバッテリーで粘ってみようと思ってしまった。スペアを車に積んでおけば、いざというときも対応できる。
そう思いながら、次にバッテリーが上がった時は替えるつもりが、春が来て夏が過ぎ、車検の時期も乗り越えて、冬になってもバッテリーは全く問題なく動いていた。去年の冬の出来事は何だったのか。単純にあまり乗っていなかったから、一充電できてなかっただけなのだろう。
今のところなんの異変もないし、まだ使えそうに思える。ただ、買ってしまった新品のバッテリーはもう1年も車に積みっぱなしだ。置いておいても劣化するだけだし、あれからちょうど季節も一巡、ようやく交換することにした。
バッテリー交換の工賃
その前にもう一つ、交換するタイミングがあった。カー用品店に車検を出した時だ。実際、車検の見積もりついでに、このスペアのバッテリーに交換してくれないかと頼んでみた。ただ、そこは大手チェーンの店で、そういう融通はきかない。当店で購入したバッテリーなら交換できますがという返答だった。もちろんバッテリー代の他に工賃もかかる。まあそれなら仕方ない。もともと自分でやるつもりだったのだから。
しかし、バッテリーの交換なんて、こんなもので工賃を取られるなんて、自分でやる一択じゃないかと思っていた。車の事は詳しくないがけど、単にネジ止めされてる電池を替えるだけなのだから。
赤ベコ・ムーブ
タントの前に乗っていた車も、普通にバッテリーは変えられた。ダイハツのムーブ。あれもなかなか乗り心地の良い相棒だった。赤いボディとややずんぐりした体型をもじって「赤ベコ」と呼んでいた。
それをやむなく手放したときのことを、ふっと思い出す。まだ谷中にお店のあった頃のこと。広すぎたガレージを返すときだった。そこは倉庫と車庫が一体になっていて、広さや用途や立地をひっくるめて考えると、周辺の物件の相場よりかなり安かった。ただ、安いとはいえ、お店を借りてガレージも借りてというのは、結局、僕にとってはオーバースペックだった。止める場所のなくなった車は手放すことになる。それからは車で資材を仕入れに行かずに済むように、お店の奥と、半ばなし崩し的に使わせてもらっているお店の屋上に、当面の資材を溜め込んで続けることにした。
ちょうどガレージを引き払う前のガレージセールのときの動画が、まだインスタに残っていた。
タントのバッテリー交換
とまあ、当時のことを感傷的に振り返りながら、いまはバッテリーだ。そのムーブのときはかなりスムーズにできたような気がする。というのも、苦労した記憶が一切ない。それどころか手元にスパナがなくて、その辺にあったペンチかプライヤー(つまり大きめのペンチ)だけでできたような気がする。

※普段の工作で使うプライヤーとラジオペンチ
なので、今度のタントもそんなふうにできると思っていた。スパナも持たずにタントを停めている駐車場までいった。
車のボンネットを開ける。このタントも4年くらい乗っているが、この辺はあまり開けたことがない。ムーブのときは時々開けてオイルのチェックとかしてたけど、どういう気持ちの変わりようだろう。やっぱりガレージに停めていたというのが大きいと思う。露天の駐車場だと、どうも整備する気にならない。そう思うと今まで良くこのタントは無事に走ってくれたと思う。

自分の幸運とタントの頑張りに感謝しつつ、プライヤーを握る。で、まずどこを外すんだったか?ここまで来てバッテリー交換の基本まですっかり忘れていることに気がつく。ネットでバッテリー交換を検索して、2,3ページ流し見して、一番シンプルなページを選ぶ。はからずも、今使ってるバッテリーメーカーのパナソニックのページだった。https://panasonic.jp/car/battery/support/changing.html
なるほど、マイナスからか。端子を止めているナットをプライヤーで挟む。が、うまく力が加わらない。狭くて角度が悪い。それでも回すとナットが緩んでいるのだか、ナメてしまっているのだがわからないような嫌な感触がする。いったんプライヤーを外し、もうひとつ持っていたラジオペンチ(笑)でその狭いところに差し込む。が、これも嫌な感触。ここはいったん初心に帰ろうということで、パナソニックの言う通り、10ミリのスパナを取りに家に帰った。

※ダイハツ車だけどトヨタのスパナ
流石にジャストサイズのスパナがあれば、ナットは緩む。小刻みにナットを回し端子を外した。次に、フリーになってプラプラしているターミナルに気をつけながら(パナソニックの動画ではこれに軍手を被せていた。なるほど頭いい)バッテリーを固定している止め金具のナットも外す。これで取り外しはほとんど終り、のつもりだった。
タイトなエンジンルーム
さてバッテリーを取り出すかという段取りになって、エンジンルームの狭さを再確認させられる。固定が解けたとはいえバッテリーが通る隙間がないのだ。狭い上に金具が邪魔して、引っ張り出そうとしても2センチくらいしか動かない。どうやって出すんだこれ。
おかしいな。こんなはずではないんだけど。ムーブのときはここからは楽だったはずだ。ならタントでできないはずはない。
そう思ってバッテリーを引っ張っても、どうしても取り出せなかった。もしかして、この辺の金具の大元まで全部外さないとだめなのか?疑心暗鬼に陥る。とはいえ、さすがによくわからないところのナットは緩めたくない。
ならここで諦めるか?そしてもう一度バッテリーをつけ直して、カーショップに持っていってやってもらうしかないのか。でもそうしたら、買ってしまった未使用のバッテリーはどうなる?まるまる無駄になる。いやいや、まてまて。もう少し考えよう。
もう一度ネットで検索。今度は「タント バッテリー交換」などで、タントにスポットを当てて調べる。これだけ困難ならきっと誰かが解説してるはず、そう思った。だけど、出てきたページは、割とすんなり取り外しをしていて、期待していたものではなかった。ほんとに普通に取れるのか?
途方に暮れかけた。こんなに手こずるとは思わなくて、この後、車で出かける用事すら予定している。ここに来てようやく自分ののん気だった見通しを後悔し始めた。
いつものパターンか
車を使っていると年に一度くらいの頻度で、こんなふうに困難に見舞われる。困難というか、大抵は準備不足や知識不足なのだが……。去年のバッテリーあがりもそうだし、よく遭遇するのは、エンジンを掛けるときにセルが回らないというやつだ。単にハンドルロックだったり、キーの電池が切れてたりとか、そんなことばかりなのだが。そして無事に過ぎれば、その後は喉元すぎれば熱さも忘れるで、すっかり忘れてしまう。それで1年後にまた遭遇、あれどうするんだっけ?という状態になる。毎回それで説明書を開くことになるのだ。
タントのトリセツ


そうか、取扱説明書だ!車の知識は常にこんな感じなのでダッシュボードにはこれを常備している。さすがにバッテリーの交換できない車なんてないだろうし、ここになにかヒントが書いてあるだろう。
一縷の望みをたくしてページをめくる。バッテリー交換というドンピシャの項目は見つからない。それでも、バッテリーあがりというそれらしいページを見つけた。これは他車から電気をもらって対処するやつだ。その際はエンジンルームサービスカバーというものを開けるという。
これだ!やっぱり狭すぎるよなエンジンルーム。何かしら開けてスペースを広げるんだ。もう一度エンジンルームへむかう。するとあった、説明書通りにカバーが。ここが取れる仕組みなのか。感心しながらパッキンを外していき、バッテリー上のカバーを外した。一瞬にして視界がひらけた。
しぶといバッテリー
が、しかし。上部が広がったものの、相変わらず金具が邪魔をしている。上に持ち上げることはできそうにない。まだなにか開くところがあるのかと再び説明書を見ても、これ以上の情報はなかった。ならばこのまま行くしかない。
やれるだけのことはやったはずという強い気持ちをだけ持って、もう一度バッテリーを前から引っ張り出す。こころなしか動いてきた気がする。全面にあるラジエータータンクとぶつかるところまで出てきた。こいつも邪魔なんだよなあと舌打ちするが、よく見ればタンクの形状は意味ありげに斜めになっている。その角度に合わせてバッテリーを絶妙に傾けながら持ち上げていく。
パナソニックの動画では、バッテリーは傾けないでくださいと注意喚起しているが、これはどうやっても傾けないと出てこないように思う。それに、このラジエターの意味深な角度。このまま斜めに引っ張り出すことにする。
バッテリーは重量物で、しかもエンジンルームという中途半端な高さにある。少し持ち上げるだけでも腰に負担がかかるのがわかる。僕はヘルニアの患者なのでその辺の感覚は敏感だ。これは工賃有料だわ、自分でやるかお店に頼むかの二択だわ、と考えを翻しながらも、ここまで来たらやるしかない。最後ラジエータのキャップが引っかかりかけたものの、なんとか這い出てきた。やった!とうとうバッテリーを取り出すことができた。


最後の山
ここで終わり、とならなかったのが、いままで整備を放置してきたタントからの戒めかもしれない。最後に新しいバッテリーを入れる際にも、それなりに苦労した。出したのだから入るはずなのだが、また反対の方向から入れるとなると、違うところが引っかかる。バッテリーの上部が金具でガリガリに傷つけられながらも、もうここまで来たらいったれ!の精神で押し込む。
なんとか元の場所に収まった。あとは端子を接続していくだけだ。電池なのでショートに気をつけながら、今度はプラス端子からターミナルに接続と。
ようやく苦労したタントのバッテリー交換を終えることができた。
追伸的なこと
取り外したバッテリーは、まだ使えそうなので、アウトドアもしくはサバイバル用のバッテリーとして使おうと思っている。家電に使えるように、コードや端子をそろえる必要はあるが、おいおいやっていこう。
あと、これはタントのようにフロントをギリギリまで詰めて、その分後方のスペースを重視している車種はおそらく他社も含めて、みなタイトなバッテリー交換になるのだろうと思った。同じダイハツでも、ムーブは簡単だったのは、フロントがもう少し前に出てる分エンジンルームが広くて取り回しやすい。
最後に、スペアのバッテリー積んでるからといって安心してたけど、実際にどこかの路上で交換になってたら、もっと大変な目にあっただろうなと思う。なんやかやと時間もかかって、予定にも遅れたけど、こうやって自分の駐車場で動画撮りながらのん気にできたのは、ラッキーだったと思う。